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先日、私の祖父の33回忌法要があった。私の記憶の中にいる祖父は、座椅子にもたれ、その右側に醤油の瓶が置いてあった。祖母は漬物作りの名人だから、その漬物に少しかけるために醤油の瓶がいつも手の届くところにあるのだ!と勝手に解釈していた。
祖父の7回忌を終え、思い出話で盛り上がったとき、「じいちゃんは醤油の瓶を大事にしてたな〜」という私の一言で母や祖母が大笑いした。焼酎だったのだ。私の父はお酒が一滴も飲めないので、私は一升瓶といえば料理用のお酒か醤油ぐらいしか見たことがなかったのだ。
祖父の33回忌。祖母は95歳になった。お寺でお経が始まる。祖母が「何にも聞こえやん!」と横に座った私に言う。95年も使ってきた耳だもの、少々ポンコツになって当たり前。祖母は聞こえないお経を心で聞いていた。
お経の合間におっさん(お坊さんのことを、そう呼びます。)が、おりんを鳴らします。祖母の耳にはおりんの音はよく聞こえるらしく。「チ〜ン」の音が聞こえると「終わった!!」と大きな声で言うのです。「まだやに!」と私。しばらくたって「チ〜ン」となると「終わった!!」と祖母。その度に「まだやに!」と私。
お経の本を渡されていた息子達は、私の母がその本を見ながら一緒にお経を唱え始めたら、真似して本を見ながらお経を唱えだした。びっくりした。大合唱になったのだ。
おっさんの声は小さくて祖母の耳には届かなかったけど、ひ孫の大合唱は祖母の耳に届いたのだ。
「チ〜ン、チ〜ン、チ〜ン」、本当に終わったのに、祖母の「終わった!!」の言葉はなかった。ニコニコ笑っているだけだった。ちゃんとお経が聞こえたから、リンの音より先にお経が終わったことがわかったのだ。
40分間の正座を終えた息子達はなんだかとても得意気な顔をしている。祖母と一緒に住む高校生の孫が「おばあちゃん最高!!めっちゃ面白いわ〜」と言って、椅子から立ち上がる祖母に手を貸していた。
「いい法事やったな〜」と父母が何度も言った。私もそう思った。祖父も喜んでいるだろう。焼酎の瓶を抱えながら。 |